2017年05月11日

相続:遺言書を見つけたら?(その2)

前回の記事の続きです

遺言の検認が済めば,今度は,遺言の内容を実現していく必要があります。

その実現方法は,遺言の内容によって変わってきます。
遺言の内容を前提に相続人全員で遺産分割等の手続をすれば足りる場合もあれば,遺言執行者を指定して職務を執り行ってもらわなければならない場合もあるからです。

遺言執行者とは,遺言の内容を実現するための仕事(遺言の執行)をする者のことです。
次のようなルールで選ばれることになっています。
・遺言で遺言執行者が指定されている場合遺言で指定された者
・指定されてないor指定された者が亡くなっている場合家庭裁判所が選任した者
後者の場合,相続人が,遺言執行者の選任を家庭裁判所に求めることになります(手続は裁判所HP参照)。

そもそも遺言によってなし得る事項は法律上次のように限定されています。
@ 財団法人設立の意思表示(一般財団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
A 認知(民法781条2項)
B 未成年後見人の指定(民法839条)
C 未成年後見監督人の指定(民法848条)
D 推定相続人の廃除又はその取消し(民法893条,894条)
E 祖先の祭祀主宰者の指定(民法897条1項但書)
F 相続分の指定,指定の委託(民法902条)
G 特別受益者の持戻しの免除(民法903条2項)
H 遺産分割方法の指定,指定の委託(民法908条前段)
I 遺産分割の禁止(民法908条後段)
J 相続人相互の担保責任の分担(民法914条)
K 遺贈(民法964条)
L 遺言執行者の指定,指定の委託(民法1006条1項)
M 遺贈減殺の順序,割合の指定(民法1034条但書)
N 信託の設定(信託法3条2項)
O 生命保険金受取人の変更(保険法44条1項)

たとえば,A子の認知が遺言の内容となっている場合,遺言執行者を選任しなければ認知の届出ができないので(戸籍法64条),遺言執行者を選任する必要があります。

他方,遺言と言えば,典型的には,F相続分の指定,H遺産分割方法の指定,K遺贈といった遺産をめぐるものが多いですが,相続人さえいれば遺産分割協議をすることもできるし,不動産の登記や預金の入出金などの手続も相続人全員の同意があればできるため,必ずしも遺言執行者を選任しなければならないわけではありません。

ただ,相続人や遺産に含まれる財産が多い場合には,財産を整理して全員の同意を取りながら手続を進めていくのに時間と手間がかかってしまうため,遺言執行者を選任する方が良いでしょう。

また,相続人や遺贈を受けた受遺者らの間に潜在的な対立がある場合には,遺言執行者が中立な第三者として手続を取れば,関係者同士で遺言の執行に無用な不信感を抱き合うことなく進めることができるというメリットもあります。

相続問題には,その他にも,遺産の調査や相続人の調査など,遺言の執行や遺産分割協議にとりかかるまでに難しい問題がたくさんあります。
お悩みの場合には,当事務所へお気軽にご相談ください。
(毛利 圭佑)
posted by habataki at 00:00| 相続

2017年05月10日

相続:遺言書を見つけたら?(その1)

被相続人が亡くなり,遺品整理などをしているときに,遺言書を見つけたらどうすればよいでしょうか。

遺言には,主に
公正証書遺言:被相続人が公証人役場で公正証書として作成してもらう遺言
自筆証書遺言:被相続人が自筆で作成した遺言
の2種類があります。
自筆証書遺言の場合には,遺言執行の準備段階として,家庭裁判所で遺言書の検認手続(手続については裁判所HP参照)を取ってもらう必要があります。
公正証書遺言の場合には,検認手続は不要です。

また,遺言書に封印(封筒に「遺言書」などと書いて口を糊付けしているような場合)には,検認を行うまで開封することもできないことになっています。
遺言書と書かれた封筒を見つけた場合,中身が気になっても勝手に開けてはいけないという点には注意が必要です。

このことは知らない方も多いので,自筆証書遺言をする側としても,開封せずに家庭裁判所で検認してもらうことなどとメモ書きを付けておくのが親切かもしれません。
遺言書の検認は,あくまで,相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに,後日,遺言書の内容を書き換えたり遺言書を破棄したりすることを防ぐための手続です。
そのため,検認を経たからと言って,「真に被相続人が書いたものなのか」や「遺言として有効なのか」などの点が確定されるわけではないということにも注意が必要です。
(遺言書の検認)
民法第1004条
1項 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2項 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3項 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

遺言書の検認を経た後どうするかについては次回書きます。
(毛利 圭佑)
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2013年02月08日

相続:特別受益について(その3)

1 高等教育の費用
 高等教育というのは、義務教育である中学校よりも上の高等学校や大学といった段階の教育です。
 一般には、中学校までの義務教育はもちろん高等学校教育についても、現在のわが国の教育水準を考慮すると、親の扶養義務の範囲内に属するものであり、親が亡くなった場合に特別受益と評価するべきではないと考えられています。

 大学教育については、被相続人(親)の資産状態や社会的な地位などを考慮して、扶養の範囲内というべきか、生計の資本としての特別受益と評価するべきかを決めるべきだとする裁判例があります。
 ケースごとに、主には大学教育を受けていた当時の被相続人(親)の資産状態がどうだったかが決め手になってくると思います。

2 生命保険金請求権
 亡くなった方(被相続人)に掛けられていた生命保険の保険金については、契約に際して定められた受取人が請求権を取得することになります。
 相続の対象となるか否かについて、判例は原則として生命保険金請求権は遺産にはならず、受取人の固有の権利であるとされています。
 税法上はみなし相続財産とされることが多いので、注意が必要です。

 次に、生命保険金請求権が、遺産に含まれないとしても、特別受益として持ち戻し計算すべきか否か、持ち戻し計算するとしてその金額をいかに考えるべきかについては、考え方が対立しています。
 通説的な考え方は、特別受益として持ち戻し計算の対象とすべきだとし、持ち戻しされるべき金額は、現実に支払われた保険料の額の保険契約上払わなければならない保険料全額に対する割合を、支払われる生命保険金に乗じて算出された金額を持ち戻しすべきだとしています。

 特別受益に関する考え方は理解できても、現実にどう計算するかとなると、困難な問題があります。是非専門家に相談してアドバイスを求めて下さい。
posted by habataki at 00:00| 相続